自分自身の出来事の覚書のようなものとして私はFacebookを活用していますが、過去の思い出機能はとても有り難く、懐かしい出来事が新鮮に蘇る時もあれば、今回のようにとても有益な情報が再び手元に届くことも。
CWニコルさんは、作家で環境保護活動に尽力された方。長野県黒姫の「アファンの森」を再生したニコルさんは、自然に触れることで子供たちが笑顔と自信を取り戻す様子を見て、自然こそが心身の回復(セラピー)の場であると主張していました。自然欠乏症という言葉を私が知ったのは、ニコルさんが他界されるまで20年間実行委員長を務めていらしたアースデイ東京がきっかけでした。
「自然欠乏症候群」は、都市化やデジタル化により自然と触れ合う機会が減り、子供の集中力低下、情緒不安定、身体的な未発達などが引き起こされる状態のこと。益々その状態は深刻な社会課題になっています。この記事は18年前のものですが、とても強いメッセージとして今を生きる私たちの胸に刺ささります。

2008年9月19日 夕刊掲載
再読 あの言葉:C・W・ニコルさん作家のC・W・ニコルさんは生前、執筆に励む傍ら、長野県の里山の再生活動に取り組んだ。日本国籍を取得し、「祖国」に時に優しく、時に厳しい視線を注いだニコルさん。2008年のインタビューからは、日本人の良さを見つめ直すヒントが浮かぶ。
お金や時間がかかっても、畑や田んぼをちゃんと利用しようよ
―1962年に、初めて見た日本の印象はどうでしたか。
日本に来て3日目に、ドイツ人の友達と伊豆に行って、初めて天然の竹を見たんです。山があって、温泉があって、北極から来たから別世界に感じたんですね。日本は暖かい国で、伊豆の森はジャングルに近いと思いました。だからその後、長野のアルプスで雪の深さにびっくりしました。4メートル以上あったね。森の木の種類にもびっくりした。ブナやコブシ、ヤマザクラとかの木と雪景色は西洋人の中ではつながらない。クリスマスツリーとかは針葉樹でしょ。クマやイノシシにもびっくりした。英国ではクマは900年前、イノシシは400年前に絶滅したから。
―そのころに比べ、日本の自然環境は大きく変わりました。
バブルの最中は古い森を切ったり、川をコンクリートで三面張りにしたり、干潟という干潟を埋め立てたり、ゴルフ場がものすごく増えたりしましたね。「パチンコ宮殿」がどの田舎にもあって昼間でもいっぱい車が止まり、畑には年寄りしかいない。「日本はどこに行くのかな」と思った。日本は原生林を守るレンジャーが足りないし、政府はあまり自然を大事にしていない。自然とともに暮らしてない、遊んだ経験のない人がどんどん上の役職になって、言葉は知ってても自然を知らない人たちがポリシーメーカー(政策立案者)になる。
―育てている森はどんなところですか。
われわれは、炭や薪を作るのが目的じゃなくて、多様性豊かな森にしようとしてるから、昔の里山より、木の種類は多いかもしれないね。光を入れて、風を通すという哲学でやってます。ゾーニングして、ほとんどさわらないとか、逆に大胆に手を入れたりとかして森の変化を調べています。
―日本の森は荒れています。
どこの田舎に行っても、荒れた田んぼ、里山、森を見る。年寄りが手入れするのは無理だけど、若い人が「金にならねえからやらねえ」というのはただの言い訳。そういう人は何してる? パチンコ、ゴルフ、一日中テレビを見てる。先祖からの土地をよくする義務があるのに、しないのは、かっこ悪い。「ずくなし(怠け者を意味する長野の方言)」だよ。子どもたちのためにも、こういう場所をもっとつくらなきゃいけない。やぶの中では遊べないもん。歩けない、走れない、見られない。僕が天皇陛下だったら、小学生のテレビゲーム禁止を呼び掛けるね。だって何の役にも立たないだけじゃなく、健康に悪い、目を悪くする。最初日本に来たとき、子どもたちはよくチャンバラをしていましたよ。ちゃんと自分たちでルールを作っていたから、けがもしなかった。
―1995年に日本国籍を取りました。「日本人になる」とはどういうことでしょう。
「私は日本人だ」と言うと、多くの人は「あいつは日本人じゃない」と言う。「目が青いし、日本で生まれていない」と。でもそれは古い考え。実際に僕みたいな人がたくさんいる。ペルーやブラジル、ハワイから来た人や、隣の韓国、中国人が国籍を取れば、彼らは日本人。僕は日本が大変になって苦しい時代が来ても、カナダには逃げませんよ。僕はずっと日本にいるよ。国籍を取るということは、これから苦しい時代も一緒にいるということを証明しているのよね。
―日本人であることの誇りは何ですか。
まずは自然。北に流氷があって、南にサンゴ礁がある島国は、ほかにないよ。それから戦争をしないこと。第2次大戦が終わってから、ずっと平和を約束して、守っている。それから、言論の自由がある。宗教の自由だけじゃなく、信仰によって差別を受けな「宗教からの自由」も。旅の自由もある。四国に行きたいとか、北海道に行きたいとか、いちいち役場に許可を取らなくてもいい。そうじゃない国が、いっぱいあるよ。日本のいいところを言うなら1週間くらいかかる。文句は1時間で終わります。
―いまの日本、日本人にメッセージを。
僕は右翼じゃないけれど、この国を愛してほしい。国を愛するということは、その国の自然、小さな生きものまで全部愛すること。他の国を憎む、戦争するのは愛国主義じゃないです。国を愛すると、ほかの国の愛国精神も理解できるようになる。日本の資源は森です。森と川と海岸、山。その美しい自然を、便利だからと言ってごみ捨て場にしないでくれ。生かそうよ。サケやアユが戻れる川、元気な森をつくろう。お金や時間がかかっても、畑や田んぼをちゃんと利用しようよ。外国から人が訪ねてきたら、ああ美しいなあ、おいしいなあ、日本人優しいなあ、かっこいいなあって、日本が大好きになっちゃう。22歳の僕は、そうだったんですよ。
日本にお返ししたい。「ニコルがいてよかったな」。僕が死んでから誰かがそう言ってくれるならいいな。




















