【前編】生きづらさの正体は「傷ついた自律神経」だった

ゆるりはで出会う方の殆どは、何かしらの発達性トラウマを生きづらさに抱えておられます。
ハートケアを始められる方に限れば、ほぼ100%ではないでしょうか。

  • 「ずっと緊張が抜けない」「リラックスするのが苦手」という生き方を身につけてきた人
  • 「自己主張が苦手」や「つい自分のことより他人のこと」になりがちな人
  • 「人が苦手」「なんだか疲れてしまう」「自分らしくいられない」「自分がそもそもない」という人

それらの原因は決してその人の生まれ持った性質や性格にあるのではなく、発達性トラウマが由来であるケースが殆どです。発達の段階で傷ついてしまった神経系、あるいは発達できなかったという神経系に関係しています。その傷ついた神経系はどういう状態になっているのか、正常に発達できないままの神経系はどういう状態になっているのでしょうか。

先の「13のスペクトラム」に照らし合わせて紐解いていくのにあたり、題材にするのは「私自身の自律神経」のこと。どんなに長年傷ついてきた自律神経であったとしても、いつからでも、何歳からでも育て直し、発達し直せるという回復への道はあります。それを知ることで、長い間苦しんできた方が「私も楽に生きられるかもしれない」と少しでも希望を感じていただけますように。

※『13のスペクトラム』や色の分類は以下のブログをベースにしていますが、難しく捉えたり理解しようとしなくて大丈夫です。要するに、「自分が悪いと思ってきた日常の生きづらさは、実は自律神経が自分を守るために作動していた」ということです。「そういう仕組みなんだな」とだけ、なんとなくご理解いただけたら充分です。

何が「過剰」で何が「欠如」していたか

発達性トラウマ時代:30年間過適合の中で維持されてきた自律神経の配置

[過剰に発動していたゾーン]

交感神経 × 背側迷走神経(防衛・緊張)

– 懐柔(過適合・場を壊さないための自己抑圧)
– 闘争 / 逃走(常に緊張と警戒を保ち続ける)
– 息抜き風の逃走・フリーズ(過集中による感覚麻痺による現実逃避)

長年にわたり、環境(家庭)に過適合するため「懐柔(黄色)」が基本作動していました。自分の本音(自分という存在や意志)は無いものとして安全を確保しようとするため、交感神経の緊張が解けないまま「常に警戒態勢」が強いられます。限界に達すると「脳を麻痺させてやり過ごす逃走・フリーズ」で一層の過負荷を処理するしかなく、身体内部では慢性的な緊張のアクセルとブレーキが同時に踏み込まれ続けていた。

※この神経系の緊張から、私自身も後天性のADHD気質が育まれていきました。それが子ども時代から自律神経をさらに疲弊させていたという事実は、私にとって大きな気づきでした。ご自身やお子さんに「もしかして同じような傾向があるかも」と感じる方は、この視点を持つことで「何に困り、何を求めているのか」を紐解くきっかけになると思います。


複雑性トラウマ時代:20年間構造的解離の中で維持されてきた自律神経の配置

[過剰に発動していたゾーン]

交感神経 × 背側迷走神経(防衛・緊張)

– 懐柔(過適合・場を壊さないための自己抑圧)
– 闘争 / 逃走(常に緊張と警戒を保ち続ける)
– 息抜き風の逃走・フリーズ(過集中による感覚麻痺というまやかしの休息)

発達性トラウマで生存戦略として身につけてきたパターンをそのまま発動させていたのが複雑性トラウマです。生存戦略として身につけた相手の意向や不機嫌、場の雰囲気などを瞬時に感じ取る力を発揮し、反射的に「懐柔(自分の気持ちを殺して場を収めようとする状態)」が発動します。自分の本音や違和感を封印し、笑顔や従順さで場を収めようとするパターンです。自分の意思に気づくよりも前の反射行動なので、それが故に自分の意思を実は押し殺していて疲弊させているということにさえも気がつくことができません。それが極限の過適合です。自律神経の視点からは、「安心しているから調和している」のではなく、「交感神経の恐怖」を「背側のブレーキ」で力ずくで抑え込んでいる過緊張状態を指します。「自分では咄嗟には気づかない・気がつけない」というところが大事な部分です。これが日常茶飯事になっていくと、「自分には感情がない・気持ちがない」になっていきます。

発達性トラウマにおいては、「養育者」に見捨てられる・嫌われる・虐められる恐怖。複雑性トラウマでは、社会に出たあとの人間関係で同じような「交感神経の恐怖」を常に感じ似たようなパターンを繰り返すことになります。

娘の子育てにおいては、この生存戦略としての極限の過適合と解離による完全な回路の分離を発動していました。「交感神経 × 背側迷走神経の私」とは別人格を作り出し、娘と向き合う時は「安全で温かい母」としての「守る・育む・慈しむ」という、無条件の「腹側迷走神経(安心・安全・つながり)」の領域にカチッと切り替えていたのです。無理をして演じていたわけではなく、自分自身すら完璧に騙し通せるほど、神経系が無意識に・全自動で完璧なスイッチ切り替えを行っていました。

「絶対自分の母親のようにはならない」「虐待を連鎖させない」「理想の母親・夫婦・家庭を築く」という強固な意志に応えるため、神経系が総力を挙げて創り出した奇跡的な防衛システムだったのだと思います。結果として世代間トラウマの連鎖を断ち切り、娘は「世界は安全で、私は愛されている」という極めて健やかな自律神経の土台を持って成長することができました。

その20年の間、「ないもの」として抑え込んだ怒りやトラウマのエネルギーは身体の深部(臓器・神経系・内分泌系)に蓄積され続けていました。娘が無事に成人し「演じる必要(警戒の糸)」が無くなったとき、それまで解離によって封印されていた巨大な疲弊と緊張が一気に解凍され、身体表面へと溢れ出た結果が副腎疲労や長引く身体の不調でした。

 

[欠如・封印されていたゾーン]


– 回復 / 親密 / 背側懐柔(身体を真に脱力し、他者に委ねる安全ゾーン)
– 遊び / 競争 / 交渉(自分を損なわずにポジティブにエネルギーを燃やす)

腹側迷走神経が絡む全般、特に「回復」「親密」「背側懐柔」が欠如していました。「身体を完全に脱力して誰かに委ねる」「ただその場にいて安心する」という腹側×背側の紫ゾーン(回復・親密・背側懐柔)へのアクセスは構造的に遮断されていたのだと思います。また、「安全な基地」がない状態では、交感神経を使った「遊び」や「交渉」も、すべて「相手を怒らせないか」「また失敗しないか」という警戒(闘争・逃走)にすり替わってしまうため、発動できなくなります。 (ADHD気質による言動が否定・攻撃の対象になるような環境では、交感神経  × 背側迷走神経にすり替わってしまいます)

この「安全基地」が失われていた環境の中で、愛犬アッシュは私の「唯一の腹側迷走神経(安心・安全」)をつなぎ止める生命線として存在していたのだと振り返ります。アッシュ、ありがとう(泣)!

離婚後〜入籍:解凍の予兆と過渡期の摩擦の2年間

離婚後、環境が変わっても長年の警戒モードを急には解除できず、新しいパートナーシップが始まっても長年の「過適合・懐柔」の癖から、なかなか本当の意味で心や弱みを開ききることができなかったんですね。神経系は「安全だと分かっているのに緊張を解けない」という強い矛盾を抱え、この「心を開ききれない葛藤」も、過剰な交感神経の緊張(副腎への負荷)として蓄積していったのだろうと思います。

入籍後〜現在まで:安全基地の確立と自発動による身体に記憶されたトラウマの解放

愛犬アッシュの死という大きな転機を越え、自ら「原因究明とケア」へ舵を切り、54年目にして正常稼働のフェーズへ。

新しい夫との生活や信頼関係の深まりによって、人生で初めて「安全な基地(腹側迷走神経の強力な土台)」が確立され、自分の内側への信頼も芽生えたタイミングで細胞と神経に幾層にも刻まれたトラウマを発散し、脳で再回収し、人生の再定義を全て終えたところから、長年封印されていた「回復(青紫)」「親密(赤紫)」「背側懐柔(茶色)」のゾーンへと、身体が着地し始めています。

長年戦ってきた自律神経系

生きた実例として取り上げた私の半生は、決してものすごくレアな事ではありません。ゆるりはを訪れる方の多くが、同じように長年「交感神経×背側迷走神経」の過緊張モードで必死に自分を守り、生き抜いてこられています。

「いつも緊張が抜けない」 「リラックスするのが怖い・苦手」そう感じてしまうのは、自分が悪いのでも、意志が弱いからでもないのです。 それは、過酷な環境の中で生き抜くために、自律神経系が必死に働いてくれた自己防衛の技であり生存戦略そのものなのです。

どんなに長年(私の場合も50年以上)傷つき、緊張し続けてきた神経であっても、適切なステップを踏めばいつからでも「安心・安全」を教え直し、再発達させていくことができます。では、具体的にどのようにして身体に「安心」を記憶させ、すり減った神経を修復していけばよいのか。「安全ゾーン」に着地するまでの具体的なアプローチや、日々のセルフケアについて、次回のブログで綴りたいと思います。




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